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武田 悠
国際政治, (185), p.114 - 125, 2016/10
米国が現在とっている包括的事前同意制度は、先進的な原子力利用計画を持ち核拡散リスクもない国に対して、米国起源の核燃料の再処理とプルトニウム利用を包括的・長期的に認めるというものである。この制度が1982年に採用されるまでには、核不拡散のためのプルトニウム利用の中止を主張したカーター政権の主張と、それに対する同盟国の反発があった。特に日本は、カーター政権が同盟国による再処理と使用済燃料の輸送への同意を厳格かつ個別に審査する方針をとったことに反発し、米国と協議を続けつつもより長期的・安定的な事前同意権行使を求めた。西欧諸国から激しい反発を受けていた米国は、日本の提案をきっかけに政策の再検討を実施した。結果としてカーター政権期に政策転換はなされなかったものの、その結果はレーガン政権に引き継がれ、1982年の決定につながった。このように米国が原子力政策のごく一部の要素にこだわったことは、同盟国に深刻な問題をもたらすとともに、国際協調体制の再構築に関与する機会も提供した。
武田 悠
日本国際政治学会2014年度研究大会部会・分科会ペーパー(インターネット), 27 Pages, 2014/11
現在米国は、先進的な原子力利用計画を持ち核拡散リスクもない国に対して、米国起源の核燃料の再処理とプルトニウム利用を包括的・長期的に認めるという包括的事前同意制度を採用している。この制度が1982年に採用されるまでには、核不拡散のためにプルトニウム利用の中止を主張したカーター政権と同盟国の間に相当の対立があった。特に日本は、カーター政権が同盟国による再処理とそのための使用済み燃料の輸送を厳格かつ個別に審査する方針をとったことに反発した。日本はまず豪州及びカナダとの間で、当時各国で検討されていた核不拡散上の要件を満たせば包括的・長期的に事前同意を認めるという制度の導入について交渉を進め、その上で米国に同様の制度を提案した。カーター政権はその強硬な核不拡散政策が日欧から反発を浴びていたため、日本の提案を受けて政策を再検討し始めた。結果としてカーター政権期に政策転換はなされなかったものの、その結果はレーガン政権に引き継がれ、1982年の決定につながった。このように米国が原子力政策のごく一部の要素にこだわったことは、日本にとって深刻な問題であったと同時に、国際協調体制の再構築に関与する機会も提供した。